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はじめに
卵巣がん治療ガイドラインによると,(上皮性)境界悪性腫瘍(LMP)I期の場合,「術後化学療法は行わず経過観察とする.一方,肉眼的に残存腫瘍がある場合では,LMPにおいては術後化学療法の有用性は証明されていないものの,卵巣癌の治療内容に準じて術後化学療法を3~6コース行うことが望ましい」と記載されている.また,ガイドライン上での卵巣癌治療との大きな違いは,stagingが不十分な場合には卵巣癌では術後化学療法が必須であるのに対し,LMPでは残存腫瘍の疑いがないと判断された場合には化学療法を省略できることもあるという点である.LMP患者は悪性腫瘍と比べ若年者に多いことから,妊孕性温存手術が積極的に試みられ,予後とともに妊娠についても良好な成績が報告されている1, 2).実際の臨床では若年者の場合,術中迅速病理診でLMPと診断されれば患側の付属器摘出にとどめ,永久標本でLMPと再確認されれば,staging laparotomyも術後化学療法も省略して経過をみる場合が多い.
ではLMPにおいて術後化学療法が必要なのはどのような場合なのか.III期以上の進行癌の場合の化学療法はどうするか.その場合のレジメンをどうするか.妊孕性温存のため腫瘍核出術にとどめたが術後LMPと診断された場合には補助化学療法は必要なのかどうか.解決されなければならない問題を少なからず含むLMPではあるが,なかには再発や予後不良例の報告もあり正確な取り扱いの確立が望まれる.本稿では過去の文献をレビューし,さらに東北婦人科腫瘍研究会(TGCU)で集計されたLMPの後方視的研究の結果を加えLMPの取り扱いを呈示したい.大多数が虫垂由来と考えられる証拠が積み重ねられつつある腹膜偽粘液腫以外の上皮性LMPについて,焦点を絞り概説することにする.
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