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1 はじめに
米国NCCN(The National Comprehensive Cancer Network)guideline(2007年)は,臨床進行期I期のすべての子宮体癌(体癌)に対して,「単純子宮全摘+両側付属器切除(両付切)+骨盤~傍大動脈リンパ節郭清+腹腔内細胞診」という術式を推奨している.日本の子宮体癌治療ガイドライン(2006年版)では,術前診断で類内膜腺癌G1相当かつIA期相当の症例に対しては「単純子宮全摘+両付切+腹腔内細胞診」を,G2,IB期相当は「単純子宮全摘+両付切+骨盤リンパ節郭清+腹腔内細胞診」,その他のすべての子宮体癌には「単純子宮全摘+両付切+骨盤~傍大動脈リンパ節郭清+腹腔内細胞診」を推奨している.文献上,臨床進行期I期において,comprehensive surgeryを施行すると,子宮外臓器への転移率は,卵巣 : 5~15%,腹水 : 6~10%,骨盤リンパ節 : 9.3~15%,傍大動脈リンパ節 : 5.5~16%,虫垂 : 4~5%,大網 : 5~8%と報告されている(表1).ちなみに,大網切除が必須とされている卵巣癌apparent stageIでの大網転移率は約7%である.
子宮外に転移を認めた臨床進行期I期症例の5年生存率は腹水,骨盤リンパ節陽性例で60~70%,付属器,傍大動脈リンパ節転移例では35~70%程度まで低下する.また,術前I期と診断された症例の10~20%以上は手術進行期(FIGO)II期以上であり,予後も不良である1).これらの事実から,従来行われていた,あるいは今なお行われている「単純子宮全摘+両付切」では,診断,治療の両面において不十分であることに議論の余地はない.最近になってやっと,後腹膜リンパ節郭清および大網切除の妥当性が認識されつつある.
本稿では,臨床進行期I期における後腹膜リンパ節郭清の必要性について,現状と筆者の考えを概説する.
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