今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
II 不妊治療
【ART】
4.至適な胚移植法とは?
向田 哲規
1
,
高橋 克彦
1
1広島HARTクリニック
pp.515-519
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101737
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1 はじめに
胚移植(embryo transfer : ET)は生殖補助医療(ART)の中心であるIVFにおいて最も重要な手技の1つであるにもかかわらず,ほかのテーマと比べて系統的に考察されることがなく,いまだ十分な注意が払われていない.MEDLINEによる論文検索では1978~2005年の間に,ヒトIVFに関しては16,445の論文があるが,ETに関するものは394と全体の2.3%にすぎない.
ETは,カテーテルを子宮内に挿入し,少量の培養液と一緒に胚を注入する簡単な手技と考えられるが,実際にはそれほど単純なものではなく,その手技が直接IVFの成績に大きく影響するのは紛れもない事実である.同一施設でもETを行う医師によって妊娠率に有意な差がみられたとの報告1, 2)もあるが,ETの手順,手技を標準化(standardize)し,その施行を徹底するとIVFの成功率はどの医師によっても変わらないとの報告3)もある.イギリスにおける80人の不妊症専門医へのアンケートでは,IVFの成績に最も影響を与える因子にETを挙げている4).このようにETは患者管理,卵巣刺激,採卵,胚培養などの各ART手技の総仕上げであり,それらの結果を決定する最も重要な手技と位置づけても過言ではない.
この稿では,ETの手技に関係する要因について,広島HARTクリニックで行っている手技を紹介しながら考察を加える.
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