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1 はじめに
幸帽児帝王切開は,小さく未熟な児(ときに発育遅延や胎盤機能不全で予備能力のきわめて少ない児)を娩出するために工夫された帝王切開術式である1~3).超低出生体重児における分娩では,児への損傷を防ぐ目的で帝王切開を選択しても厚く伸展していない子宮壁の切開が必要であり,強く収縮した子宮筋層・子宮切開創に児が補足されて娩出が困難となることを経験する.さらに,胎胞脱出や陣痛が始まっているときの分娩などでは状況に応じてさまざまな判断や工夫が必要である.これらの児への損傷を防ぐ目的で幸帽児帝王切開が提唱され1),わが国でも2, 3)広く行われている.分娩様式を経腟分娩か帝王切開にするかの判断においては施設のNICUの状況により週数体重などの基準が異なるため,注意が必要であるが,本稿では幸帽児帝王切開を安全かつ確実に施行するための適応や実際の手技上の工夫につき解説する.
2 早産における分娩方法の判断
在胎22~36週までが早産の範囲であるため,その未熟性には大きな違いがある.22~23週の生存限界に非常に近い早産未熟児,24~28週前後の超低出生体重児(1,000 g未満),32週くらいまでの極小低出生体重児(1,500 g未満)とそれ以降のいわゆるnear termと呼ばれる34~35週で2,000 g前後の早産ではその取り扱いは異なる.幸帽児帝王切開は基本的には推定体重1,000 g未満に対して行われる.
分娩方法(経腟分娩か,帝王切開か)の判断には,(1)在胎週数および児推定体重,(2)胎位,(3)陣痛発来前か後か,(4)児のwell─being,などを考慮し,個別に対応する.特に頭位の場合,near termで推定体重1,800 g以降であれば満期の施設分娩基準にしたがい経腟分娩が選択され,推定体重1,200 g未満で超低出生体重児の出産が疑われるときは帝王切開が選択されることが多い.また,骨盤位の場合は帝王切開を選択することが多い.しかし,24週未満の症例においては,当該施設の児生存率を考慮し決定されることが必要である.当センターにおいては,原則的に生存率50%以上を期待できるときには経腟分娩時の圧迫によるストレスを回避するために帝王切開を選択している.
帝王切開を選択するということは(母体への侵襲があるため),児にとっての有益性が期待できなければならないため,(1)帝王切開を選択しても児の予後に寄与しないと考えられる場合や,(2)経腟分娩でも十分に安全に児にストレスをかけずに分娩が期待できる場合などは経腟分娩を選択する.例えば,推定体重が800 gの児でも陣痛が発来し,児頭が腟内に下降しているときなどは帝王切開を選択しても子宮からの児の娩出が困難であるため,経腟分娩が選択される.
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