今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
I 周産期管理
【妊娠管理】
2.妊婦のインフルエンザ予防は?
久保 隆彦
1
,
山口 晃史
2
,
村島 温子
2
1国立成育医療センター周産期診療部産科
2国立成育医療センター周産期診療部母性内科
pp.365-369
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101711
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1 はじめに
香港を発端とした重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome : SARS),あるいはヒト感染による死者がアジアで急増している鳥インフルエンザがわが国にも持ち込まれるのではないかと危惧されている.このSARS,鳥インフルエンザとインフルエンザの症状(発熱,頭痛,関節痛,筋肉痛,咳)は酷似しており,インフルエンザとの鑑別が問題となっている.確かに,SARS,鳥インフルエンザは今後危惧すべき重篤な輸入呼吸器感染症なのだが,実際には結核,インフルエンザなどの呼吸器感染症の死亡者は桁違いに多く,結核の死亡者は全世界で毎日約5,000人,インフルエンザは毎年アメリカだけでも約3万人となっている.わが国でもインフルエンザによる死亡は高齢者に多いとはいうものの,この10年間では年間1,200人を超える年もあり,平成14年も約300人が死亡している.
妊婦のインフルエンザ予防法については最近,議論のあるところである.いかなる感染症においても,ワクチンが最も有効でコストベネフィットな優れた対処法であることはすでに世界の常識であるにもかかわらず,従来からわが国ではワクチンへの生理的嫌悪感を持つ内科・産婦人科医師,あるいは厚生行政施行者が多数存在している.このことが,わが国で各種感染症を根絶できない最大の原因であり問題なので,この点に重点を置き略述したい.
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