今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
I 周産期管理
【妊娠管理】
3.臍帯卵膜付着の診断法とその精度は?
長谷川 潤一
1
,
松岡 隆
1
,
市塚 清健
1
,
大槻 克文
1
,
関沢 明彦
1
,
岡井 崇
1
1昭和大学医学部産婦人科学教室
pp.370-373
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101712
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1 臍帯卵膜付着
卵膜付着は臍帯・胎盤の発生異常であり,臍帯と胎盤のほかの異常を合併しやすいことから,子宮内胎児発育遅延,早産,胎児心拍モニタリング異常,低Apgar score,新生児死亡,胎盤早期剥離などとの関連が古くより報告されている.単胎妊娠での卵膜付着の出現頻度は1~2%程度で,辺縁付着は3%程度である.双胎妊娠で,それらはおのおの約10倍の頻度になり,付着異常のある児は胎児発育遅延を起こすことが多く,注意が必要である.
卵膜付着では,ワルトン膠質に包まれないむき出しの臍帯血管が臍帯付着部位と胎盤実質との間の卵膜上を走行していることが,妊娠・分娩の異常に関連すると考えられる.ワルトン膠質は,その弾力で正常の臍帯血管を外力から守っているが,卵膜付着ではワルトン膠質が欠如するため,臍帯血管が慢性的に,あるいは子宮収縮や胎動に伴って,圧迫されやすい(図1).さらに重大なこととして,破水時に卵膜上の血管が断裂することもある.胎児機能不全(non reassuring fetal status : NRFS)を呈した分娩例の事後検索ではじめて卵膜付着が診断されることも稀ではないが,近年では超音波機器の発達により,ほかの胎児異常と同様に卵膜付着の分娩前の診断も可能となってきた.卵膜付着を分娩前に診断してハイリスクとしてピックアップしておくことは,急な帝王切開の回避だけでなく,周産期予後の改善にもつながるため,妊娠中の系統立てた超音波診断の重要性が提唱されている1~3).
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