連載 公衆衛生のControversy
インフルエンザワクチンは必要か
インフルエンザワクチンは誰のため?/インフルエンザ対策特に高齢者における予防について
母里 啓子
1
1前:横浜市旭保健所
pp.756-757
発行日 2000年10月15日
Published Date 2000/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902387
- 有料閲覧
- 文献概要
インフルエンザワクチンは誰に必要か? そして効果をどう検証するか? 費用との関係は? この問いに答えるデータを集めることを無視して,わが国のインフルエンザ対策は流行を抑える目的で,それにはワクチンしかないと流行の中心(?)である学童を対象として続けられました.1959年流行阻止分として学童,警察,当時の国鉄職員,郵便局員など公共の職に従事するものに,奨励分として乳幼児や65歳以上の老人に勧められたのです.その後乳幼児には“流行が予測され感染による危険が極めて大きいと判断される十分な理由がある特別な場合を除いて勧奨をおこなわないよう”と通知されています.
1962年法律により勧奨接種とされ,1976年には臨時接種として流行の恐れがあるときの義務接種とされましたが,以来前もって怖れのない年と言われたことは一度もなく,流行があるぞ,あるぞと脅されて,学校でのインフルエンザの予防接種は年中行事として定着し,接種率を上げることが目的になりました.同じように臨時とされた日本脳炎の予防接種は先の改正までは都道府県ごとに接種をするかどうかが選択され,北海道をはじめとして東北地方では接種は行われず関東地方では幼児期の基礎免疫だけのところも多く,九州地方で毎年追加免疫のため接種をするなど,地方により日本脳炎の発生頻度に差があるのに曲がりなりにも対応しているように見えました.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.