今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
III 不妊症
【多嚢胞性卵巣症候群】62.多嚢胞性卵巣症候群の患者です.ゴナドトロピン療法を行ったところ,排卵後7日目で卵巣過剰刺激症候群を発症し,腹水が貯留して尿量の減少も認められます.
本田 律生
1
1熊本大学医学部産婦人科
pp.542-543
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101495
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1 診療の概説
卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)は医原性疾患であり,表1に掲げた重症OHSSのハイリスクグループに多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)が含まれていることを認識してゴナドトロピン療法を行うべきである.病態の主因は血管透過性の亢進であり,循環血漿量の減少,血液濃縮,凝固能亢進の程度が重症度と相関し,腹水・胸水貯留による呼吸循環不全と腎不全に加え,血栓塞栓症の続発は致死的合併症をも引き起こしうる.また,腫大した卵巣は,一部破綻や茎捻転による急性腹症をきたす危険があり,急激な貧血の進行(Ht値の低下)と腹膜刺激症状は破裂による腹腔内出血を疑う.また,限局した自発痛・圧痛が突発的に生じた場合は茎捻転を疑う.
前の設問で述べたようにhCGは症状の増悪因子の1つであり,妊娠が成立した周期では症状が遷延する一方,妊娠に至らなかった周期では,月経発来とともに速やかに症状が消退するのが特徴である.
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