今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
III 不妊症
【男性不妊】63.精子を増加させ,妊娠を目指すための処方を希望している乏精子症の患者です.
片寄 治男
1
1福島県立医科大学医学部産科婦人科
pp.544-545
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101496
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1 診療の概説
男性不妊症患者の増加に関する報告は近年多くみられるが,現在では顕微授精法の臨床応用により治療可能な時代になっている.男性因子不妊症の診断はWHO(1999年)の基準によりなされ,乏精子症は精子濃度2,000万/ml未満の症例を指す.原因はほとんど特発性であり,造精機能障害の約60%を占めるといわれ,治療を難渋させるゆえんである.
精巣内の精細管における精子形成は精母細胞からの減数分裂の過程と,円形精子細胞が成熟した精子に変態するspermiogenesisの過程に大きく大別される.この過程は視床下部─下垂体─精巣系のaxisにより巧妙に調節されている.さらに局所ではセルトリ細胞,ライディッヒ細胞あるいは筋様細胞によるパラクライン,オートクライン機構により細胞機能が調節を受けていることが知られている.精巣網から精巣上体に移行した精子はさらに管内でいわゆる精子成熟過程を経て受精に必要な能力を獲得することができ,精子形成開始から射出までに必要とされる期間は74日といわれている.したがって,何らかの治療後の造精機能評価には約3か月の時間を要することに注意が必要である.
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