今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
I 周産期
【産褥乳汁分泌の調整】7.中期流産手術が無事終了した患者です.退院の翌日から乳房の緊満があり,乳汁の分泌がみられます.
下平 和久
1
,
岡井 崇
1
1昭和大学医学部産婦人科学教室
pp.364-365
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101437
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1 診療の概説
乳汁分泌には,妊娠に伴い起こる生理的なものと,それ以外の病理的なプロラクチン上昇によるものとがある.本症例のような中期流産手術後の乳汁分泌は,妊娠に伴う生理的なものである.妊娠中からプロラクチン分泌は亢進しているが,胎盤由来の性ステロイドホルモンによって乳汁分泌は抑制されている.分娩により母体血中性ステロイドホルモンレベルが低下すると,プロラクチンレセプターの増加が起き,プロラクチンの乳房腺房上皮への作用が発現して乳汁の分泌が起きる.さらに産褥期には,児による吸啜刺激により,オキシトシンの放出とともに,ドパミン分泌の低下とプロラクチンの一過性の上昇が起こり,乳汁分泌が促進される.分娩後の乳汁分泌を望まないときは,局所安静とドパミン受容体作動薬の投与によりプロラクチンのコントロールをはかることが必要となる.ドパミン受容体作動薬は下垂体のドパミン受容体に作用してドパミン様作用を示す.これにより,プロラクチンの分泌を抑制して乳汁分泌を抑制する.
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