今月の臨床 産婦人科診療における心のケア
思春期・生殖医療
2.性分化異常, 性同一性障害
木下 勝之
1
1順天堂大学医学部産婦人科学教室
pp.139-145
発行日 2003年2月10日
Published Date 2003/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101071
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はじめに
ヒトの性には,遺伝子,染色体など遺伝型(genotype)により決定される遺伝的性と,外性器,内性器,体形など最終的な表現型(phenotype)である身体的性がある.このような生物学的性の問題には,性腺の分化を決定する遺伝子および染色体の異常や,性ホルモンあるいは性ホルモン受容体の異常に起因する性分化異常がある.その一つとして,例えば半陰陽では成人すれば性別に関する不快感や精神的苦悩が生じることが多いため,どちらの性を選択することが当事者の幸せになるかを幼児期に慎重に検討しなければならない.
しかし今日では,身体的性(sex)以外に性の自己意識(gender)の重要性が認識されている.通常,身体的性が男性(女性)であれば,心も男性(女性)であり,社会的にも男性(女性)として振る舞う性の同一性(sexとgenderが一致)が当たり前であると考えられていたが,生物学的性と性の自己意識がひとつの固体の中で,かならずしも一致しない状態のあることが明らかとなった.この状態を性同一性障害(gender identity disorder : GID)という.
本稿では,性同一性障害の病態,診断と治療,とくに精神的治療について述べる.
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