今月の臨床 産婦人科診療における心のケア
思春期・生殖医療
3.やせと肥満, ダイエット
篠田 知璋
1
1くらしき作陽大学
pp.146-149
発行日 2003年2月10日
Published Date 2003/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101072
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
現代の思春期は
従来から思春期の分類は,前思春期,思春期前期,中期,後期とされ,それぞれ学童後期,中・高生の年代に該当するとされているが,それらの内容は時代とともに変化していると考えられる.現代のわが国の思春期は,身体的発育は目覚しく,第2次性徴が出現する時期も早まり,性交渉の年齢も早まっている一方,精神面での成長は大幅に遅れている.本来思春期は,身体が成長し生殖可能となって,おとなの仲間入りをしなければならないことに「果たして自分がおとなになれるだろうか」と,身近なおとなたち,とくに両親を見てコンプレックスを感じ,葛藤する時期である.そして恋愛感情も経験する.
この葛藤の時期の彼らの反応としては,おとなに対しての態度が子供のころと変わってぎこちなくなり,また反抗的になる,秘密を持ちたがるなどがでてくる.彼らにとって周囲のおとなたちは範例となるはずなのだが,最近のおとなたち,とくに最も身近にいる親が,範例となるには未熟過ぎる例も多く,彼らはますます混乱するのである.おとなたちの資質が低下していることは,子供たちの人間的成長をおくらせ,子供たちは孤立感を抱き,短絡的,そして自己中心的な言動に走りやすくなる.性の面でも行為そのものに興味を示し,グルメ志向の性行動となる傾向が強くなっている.すなわち,身体はおとな,心は貧しくこどもという,いわゆるおとなこどもの様相を呈するのである.そして,この状態のまま成人式を過ぎていき,心の成長がないまま大学,社会人になっていく.すなわち,現代の思春期は20代,いや,30代にまで延長していると考えてよい.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.