連載 薬の臨床
黄体血腫囊胞に対する芍薬甘草湯の有用性
本山 覚
1
,
喜吉 賢二
1
,
丸尾 猛
1
1神戸大学大学院医学系研究科成育医学講座女性医学分野
pp.865-869
発行日 2003年6月10日
Published Date 2003/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100913
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はじめに
排卵に伴う黄体出血には,無症状のものから大量の腹腔内出血からくるショック症状のため外科的処置を要するものまで病像は多彩である.黄体出血が生理的レベル以上となり,血腫径が3 cm以上となった場合より黄体囊胞と定義されるが,黄体囊胞径が3 cm前後ではまだ症状が乏しいため,臨床的に問題視されることはない1).黄体囊胞内への出血がさらに増加したり,囊胞壁が破綻して腹腔内出血をきたすようになると病像は進展し,患側付属器部の疼痛や腹膜刺激症状が生じる2).黄体囊胞の多くは自然治癒するが,囊胞の破裂や経過中の新たな黄体内出血の発生により症状が増悪したり,特に本症が右側卵巣に発生した場合では他科から急性虫垂炎や急性腹症と婦人科疾患との鑑別を打診されることがある.一方,本症では,疼痛が前面に出る急性像とは異なり,形成された黄体血腫囊胞の大きさと関連して,長期にわたる無排卵症の側面も合わせ持つ3).
今回われわれは,黄体囊胞の経過観察中に,血腫囊胞破裂による腹腔内出血から急性腹症として他院で開腹術となった症例を経験したことより,従来から消炎や腹痛,痙攣,さらには排卵障害に有用とされる芍薬甘草湯を本症発生当初より投与し,本症の保存的管理における有用性を検討したので報告する.
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