Medical Topies
流産と免疫反応,他
E.M.
pp.88-89
発行日 1970年11月1日
Published Date 1970/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917666
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賢臓や心臓などの臓器移植のさい,拒絶反応が大きな障害となることは誰でもよく知っている。同じ人間どうしでも臓器を移植するさいには,この免疫反応をどうして防ぐかが大きな問題となっている。それならば妊娠したさい,母体は胎児に対して,どうして拒絶反応を示さないのであろうかという疑問がおこってくる。もし拒絶反応が容易におこるとすれば,流産はひじょうに多くなるはずである。
胎児は精子と卵との合体によってできたものであるから,半分は父親由来のものであり,当然胎児の組織は母親にとって他人の組織と同じような拒絶反応を示してよいように思われる。事実免疫学的には,胎児も胎盤組織も母体に抗原性を示す,すなわち拒絶反応をおこさせる性質をもっている。それが実際にそのような現象がおこらないのは,胎盤のもっとも外側にあって子宮内面に直接接している絨毛細胞には抗原性がなく,これが母体と胎児との問の防壁となっていると考えられている。こうして胎児は母体の中にあっても,安全に発育を保持できるのであろう。
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