今月の臨床 妊娠のリスク評価
妊娠リスクスコアリング
久保 隆彦
1
,
加藤 有美
1
,
川上 香織
1
,
種元 智洋
1
1国立成育医療センター周産期診療部産科
pp.948-953
発行日 2006年7月10日
Published Date 2006/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100743
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妊娠,分娩は本当に安全なのか?
最近のマスコミ,一般の妊婦インターネットサイトをみれば妊娠,分娩は生理現象であり,安全であるかのような印象を受ける.毎年妊産婦死亡は50~80人と先進国のなかでも最高の成績であるにもかかわらず,妊産婦死亡があることが理不尽であるかのような不満もある.本当に妊娠,分娩は安全なのだろうか.戦前の知恵ある女性家長はお嫁さんが妊娠すると,「お産をなめたらいかん.棺おけに片足突っ込んでいるようなもの」と注意を喚起したものであるが,いつのころからか「分娩の安全神話」なる根拠のない言葉が誕生した.
ユニセフが発表した2000年の全世界(開発途上国だけではなく日米の先進国も含んだ)の妊産婦死亡率は10万出生に400人であり,10年間で300に下げることがWHOの悲願である.この400(250人に1人)という数が妊娠・分娩の持つ本当の意味でのリスクといえる.わが国で換算すると,年間約4,000人の妊婦が生命の危険にさらされ,現在の日本の優れた周産期医療によりわずか約50人の妊産婦死亡にまで救命しているのである.
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