今月の臨床 症例から学ぶ子宮内膜症─子宮内膜症を侮るな
症例から学ぶ
6.卵巣子宮内膜症の長期フォローの重要性―不妊治療後の卵巣子宮内膜症性嚢胞内に出現した境界悪性腫瘍症例を通して
宮城 悦子
1
,
平原 史樹
1
1横浜市立大学医学部産婦人科
pp.1462-1465
発行日 2004年12月10日
Published Date 2004/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100686
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
子宮内膜症は,性成熟期女性の約10%が罹患しているとされ,近年女性の晩婚化,小子化,環境ホルモンの関与などにより増加傾向にある.また,1925年にSampson1)が子宮内膜症から卵巣癌への移行像を報告して以来,子宮内膜症は卵巣癌の発生母地として注目されており,その後両者の関連性を示唆する報告が多数ある2~5).また,近年の本邦での卵巣癌の増加に内膜症が関与している可能性も指摘されている.
今回,われわれは,不妊治療後の子宮内膜症性嚢胞の長期フォロー中に嚢胞内に発生した境界悪性上皮性卵巣腫瘍,mullerian mixed─epithelial borderline tumor(MEBT)の1例を経験した6).卵巣原発の上皮性境界悪性腫瘍のなかで,mixed─epithelial typeは約5%と頻度の低いもので7~9),その臨床的特性に関する報告は少ないものの子宮内膜症が高頻度に合併していることが報告されている7).その臨床経過,組織像を呈示し,文献的考察を行う.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.