今月の臨床 妊娠中毒症─新しい名称と定義
中毒症の基礎─病因・病態の新知見
4.胎盤形成障害と血管内皮細胞障害との関連からみた妊娠中毒症の病態形成過程
月森 清巳
1
,
中野 仁雄
1
1九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学
pp.1015-1021
発行日 2004年8月10日
Published Date 2004/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100579
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はじめに
妊娠中毒症の病態の中心には血管内皮細胞の障害が関与していることが明らかとなってきた1, 2).すなわち,血管内皮細胞の障害によって血管トーヌスの調節機構および凝固線溶系の異常をきたし,細動脈の攣縮による高血圧と慢性DICの状態の発現の誘因となる.蛋白尿の出現は,腎糸球体における内皮細胞の形態学的な傷害,および血管の攣縮と血栓形成による糸球体の機能的な障害による.浮腫の発生には,血管内皮細胞自体の障害に基づく血管透過性の亢進と血管の攣縮による毛細血管内圧の上昇が関与している.
一方,妊娠中毒症における胎盤床では絨毛細胞の脱落膜への侵入異常,胎盤の形成障害が認められ,妊娠初期における子宮胎盤循環の形成障害が本症の発症に深くかかわっていることが明らかとなってきた3, 4).
このような背景から,妊娠中毒症の病因・病態を明らかにするためには,血管内皮細胞を障害する機序と胎盤の形成障害との相互のかかわりを検討することが重要であると考えられる.
そこで本稿では,妊娠中毒症における血管内皮細胞を障害する機序と胎盤の形成障害との関連について第55回日本産科婦人科学会シンポジウムで発表した知見を中心に述べる.
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