特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症の病態
2.血栓形成のしくみ
5)血管内皮細胞
小嶋 哲人
1
Tetsuhito KOJIMA
1
1名古屋大学医学部附属病院第一内科
pp.33-36
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903067
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はじめに
血管内皮細胞は,従来,血漿成分の血管周囲組織への漏出を防ぐ単なるバリヤーとして働く細胞であると考えられていた.しかし,最近では血管内腔を覆う単層のこの内皮細胞はさまざまな生理活性物質を発現分泌して血液凝固・線溶の調節,血管トーヌスの調節,炎症反応(白血球接着)の調節などを行い,血管の恒常性ひいては生体ホメオスターシスに極めて重要な働きを持つことが明らかとなってきている.
血栓形成は血液凝固因子,血小板,血液レオロジー,あるいは血管内皮細胞の異常などが複雑に絡んで引き起こされるが,一方では生体の防御反応機構の一部でもあり炎症反応や組織修復反応と並行して進行し制御されている.本稿では,血管内皮細胞による血栓形成制御について,血管内皮細胞の産生するさまざまな分子を通して概説する.
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