今月の臨床 血栓症と肺塞栓―予防と対策
周産期における血栓予防対策─当科の方針
2.肺塞栓症の早期発見,救命を目指して
保母 るつ子
1
,
馬場 一憲
1
,
竹田 省
1
1埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター
pp.680-683
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100520
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はじめに
深部静脈血栓症(DVT)の合併症である肺血栓塞栓症(PTE)は,死亡率が高く,帝王切開術後に多く発症するため,最近の帝切率の増加傾向や出血,妊娠中毒症による妊産婦死亡の減少から,産科領域においてもクローズアップされている.さらに,医療トラブル,訴訟などで問題化し,マスコミにも取り上げられ社会的関心が高まってきている.
当センターが開院した1985年から2002年までに,産科領域において20症例のPTE症例を経験し,うち4症例は帝王切開後の心肺停止状態で搬送され救命処置の甲斐なく死亡している1).これらの苦い経験から,DVTの予防と早期診断,早期治療の重要性を痛感し,埼玉県下の医療施設にも呼びかけ積極的な血栓防止キャンペーンを展開してきた.帝王切開率が40%を超える当センターでもその予防に力を入れ,さまざまな予防法を駆使し全症例に行ってきたが,いまだ100%予防できず,また無症候性PTEが多く発生していることを報告してきた2).さらに産科領域では血栓リスクがまったくなくても発症しており,妊娠・分娩現象や帝王切開術そのものがリスクであり,問題の解決にはほど遠い状況にある.
今回,当センターでの成績を踏まえ,PTEの最近の実態と予防法につき述べ,その問題点を考察する.
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