今月の臨床 血栓症と肺塞栓―予防と対策
深部静脈血栓症の診療
小林 昌義
1
,
古森 公浩
1
1名古屋大学大学院血管外科
pp.666-669
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100517
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はじめに
生活習慣の変化や食生活の欧米化,また平均寿命の延びに伴い静脈疾患,特に深部静脈血栓症(DVT)およびそれに続発する肺塞栓症(PE)の報告例が増えてきている1).事実,専門外来に紹介されたDVT患者数はここ15年ほどでは増加の一途をたどっている.特にPEは,その発症がときに突然死につながるため臨床上大きな問題となっている2).悪性腫瘍や骨盤内手術後に発生しやすいといわれ,産婦人科領域でも術後合併症として注目されている3, 4).特に妊娠中は,①血液凝固能の亢進,線溶系の低下,血小板の活性化により,生理的向凝固状態となっている,②女性ホルモンの静脈平滑筋弛緩作用により静脈のうっ滞が起こる,③増大した妊娠子宮による下肢静脈還流低下,といった要素が重なるためDVTを起こしやすい状態にあるといえる(表1)3, 4).
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