今月の臨床 周産期の感染症―管理と対策
垂直感染の管理と対策
7.トキソプラズマ
関 博之
1
1関東労災病院産婦人科部長
pp.64-67
発行日 2004年1月10日
Published Date 2004/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100499
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はじめに
トキソプラズマ感染時の臨床症状は,頸部リンパ節腫脹,易疲労感,発熱,咽頭痛など非特異的なもので,しばしば無症状の場合もあるため,妊婦がトキソプラズマ感染を自覚できない場合がある.したがって,妊娠中のトキソプラズマ感染を正確に診断するためには,トキソプラズマ抗体のスクリーニング検査が必要となる.
妊娠中にトキソプラズマに初感染した場合,15~45%に先天感染が生じ,そのうちの約90%が顕性となって,新生児に脈絡網膜炎,髄液異常,水頭症,精神運動障害などの諸症状が出現する.小島ら1)は妊娠中に胎内感染が起こっても,妊娠中に治療を行えば顕性の児の発症を1/3以下に減少できると報告している.したがって,妊婦全例にトキソプラズマ抗体のスクリーニング検査を行うことができれば,先天性トキソプラズマ症の発症を減少させることが可能となる.
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