今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・18
トキソプラズマ
藤田 紘一郎
1
1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学
pp.574-575
発行日 2001年6月15日
Published Date 2001/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904779
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トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)はネコ科動物の小腸上皮細胞内で無性生殖と有性生殖とを行い,糞便とともにオーシストが排出される(図1).ネコの糞便中にオーシストが排出されるのは,ネコが初感染後3~5日から1~3週間くらいまでである.ヒトへの感染は,その糞便中のオーシストを直接経口摂取したり,オーシストを摂取したブタの肉を生で食べて,中のシストを取り込んで感染する(図2).経口的にヒトに取り込まれたオーシストやシストは小腸内で脱嚢し,遊離したスポロゾイトが腸管組織内で急増虫体となり,リンパ流あるいは血行性に運ばれて腸管膜リンパ節,肝,肺,脳などの細胞内で急速に増殖する(図3).増殖型の分裂増殖によって組織が破壊されて炎症を起こす.
トキソプラズマ症は感染の時期により先天性トキソプラズマ症と後天性トキソプラズマ症とに分けられる.後天性トキソプラズマ症では予後良好なリンパ節炎などの症状がみられるが,ほとんどの場合不顕性に経過し,成人の20%以上は既にトキソプラズマに対する抗体を有している.しかし,最近,成人が後天的に感染した場合のトキソプラズマ性網脈絡膜炎の患者が散見され,免疫能低下との関連が示唆されている.
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