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はじめに
子宮筋腫は比較的よくみられる婦人科疾患であり,婦人科外来患者の約5%,婦人科骨盤内良性腫瘍の約80%を占めるといわれている.性周期を有する女性の20~30%に子宮筋腫が存在するともいわれ,エストロゲンとプロゲステロン受容体を有し,卵巣ホルモンに反応する良性腫瘍である.その大半は無症状であり,治療を要しないことが多い.しかし過多月経や筋腫増大による膀胱直腸圧迫症状などにより治療が必要となってくる.患者の年齢や挙児希望の有無により治療方針が異なる.開腹による子宮全摘出術,腹腔鏡下子宮全摘出術および筋腫核出術,子宮鏡下子宮筋腫切除術,子宮動脈塞栓法(uterine artery embolization : UAE),収束超音波治療法(focused ultrasound surgery : FUS)と最近では侵襲の小さい治療法も多くなり,GnRHアゴニストによる保存療法も最近特に増加してきている.よって治療方針を決定するには症状,子宮筋腫の部位と大きさのほかに,子宮肉腫との鑑別診断が以前にも増して重要となってきている.
子宮肉腫の発生頻度は女性10万人あたり年1~2人,子宮間葉系腫瘍の0.5~2.0%と比較的稀であるが1),初期癌(I期)であってもその半数は2年以内に再発し,遠隔転移も多くみられ,予後はきわめて不良である.II期以上では2年以内に90%が再発するといわれている2).よって正確な筋腫と肉腫の鑑別診断は治療方針に大きく影響してくるが,従来の画像診断(超音波断層法,CT,MRI)では十分な精度が得られていない.そのなかでは骨盤MRIが比較的高い診断率を示している.急激な腫瘍増大,T1強調画像での出血凝固壊死,T2強調画像でびまん性分葉状高信号腫瘤,腫瘍周囲への浸潤傾向,血管増生所見のときには肉腫を強く疑う必要がある.しかし,MRIだけでは術前診断として満足のいくものではない.また,卵巣がん症例のように鋭敏な特異腫瘍マーカーが子宮肉腫症例にはないことも診断を困難にしている.子宮肉腫は特殊例を除けば,大きくは子宮平滑筋肉腫,子宮癌肉腫,子宮内膜間質肉腫の3つに病理分類される.子宮癌肉腫症例のCA125 3),子宮平滑筋肉腫症例のLDH4)が参考になることがある.子宮筋層針生検法も適応を選べば病理診断が得られるよい方法であるが,リスクもあり必ずしも普及していない.
18F─fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG─PET)が腫瘍領域で応用され,肺がんなどでの高い検出率が報告されている5).最近では,がん検診としても応用されつつある6).従来の形態的画像診断と異なり,悪性細胞などの糖代謝亢進をFDG─PETは検出するため,機能的画像診断として,特に微小癌病巣の診断および転移部位同定に期待が持たれている.そこで本稿では,子宮筋腫や子宮肉腫におけるFDG─PETの有用性について,われわれの研究結果と文献より検討してみた.
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