今月の臨床 腫瘍マーカー─基礎知識と診療指針
産婦人科で用いられる腫瘍マーカーの種類と正常値
鈴木 光明
1
,
大和田 倫孝
1
,
藤原 寛行
1
1自治医科大学産婦人科学講座
pp.1334-1337
発行日 2005年10月10日
Published Date 2005/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100406
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はじめに
腫瘍マーカーとは,癌細胞自身または癌細胞の存在に反応して宿主が反応性に産生する物質であり,癌の診断,予後の推定,治療効果の判定,再発の発見などに有用な検査法である.現在多くの腫瘍マーカーが開発され,婦人科領域では実地臨床で広く用いられている.しかしながら現在のところ癌特異抗原はみつかっておらず,癌と正常の間に明確な線を引くことはできず,癌と非癌との間に量的,質的な差がみられる癌関連抗原などを腫瘍マーカーとして臨床応用している.
腫瘍マーカーの歴史は1848年に報告されたBence Jones蛋白質に始まる.その後AFP,CEAなどの癌胎児性抗原物質の発見につながるが,1960年代にラジオイミュノアッセイの開発に伴い,精度が飛躍的な進歩を遂げた.特に1965年に発見されたCEAは結腸癌より抽出された新しい生体物質で,その抽出方法は,後の腫瘍マーカーの開発の基本となった.その後1975年にKohlerとMilstein1)によってモノクローナル抗体の作製法が確立されたのを契機に,1979年から1980年代はじめにCA19─92)やCA1253)などの糖鎖関連抗原を中心としたモノクローナル抗体由来の腫瘍マーカーが数多く開発され,実用化された.
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