けんさ—私の経験
病的状態における正常値および疾患のマーカーとしての検査の判読についての教訓
山本 淳
1
1医療法人宝生会PL病院内科
pp.278
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906344
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検査値には正常範囲が決められており,これに従って正常および異常と判読する.しかし,病的状態では,検査値が正常範囲内にあっても異常と判読される場合がある.また,疾患と検査との間には1対1の関係は存在せず,ある疾患の活動性の指標となる検査でも,他疾患のマーカーとなりうる.この当然のことが現場で認識されずに,診断を遅らせてしまった私の苦い経験を紹介する.
慢性肺気腫で在宅酸素療法を受けていた患者を,前医から引き継いで診療した際に血液検査を施行した.Hb値13g/dlであったが,貧血とは判読せず経過観察とした.半年後,患者は嚥下困難を訴え,かろうじて胃カメラを受けたが,Borrmann III型の胃噴門部癌と診断された.遠隔転移巣はなかったが,患者が低肺機能者のため治療できず,3ヵ月のターミナルケア後に死亡した.2次性多血症の存在が念頭にあれば,早期から貧血を疑い,診断が可能であったと考えられた.
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