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はじめに
腫瘍マーカーは腫瘍由来の物質と腫瘍に対する宿主の反応物質に大きく分類される.このうち腫瘍由来の腫瘍マーカーのなかには,多種類の腫瘍で出現するものと,比較的限定された組織型にのみ出現するものがある.前者は汎用腫瘍マーカーと呼ばれているが,各細胞に共通の基本的な性質に関与する物質でもあり,正常組織でも産生される.そのため,非腫瘍性疾患,炎症,妊娠などおいても上昇し,偽陽性の種類や頻度が多くなる可能性がある.さらに,腫瘍マーカーの血中濃度は宿主の代謝・排泄能などによっても変化し,加齢の影響を受けるものも少なくない.したがって,腫瘍マーカーをスクリーニングとして用いる場合,カットオフ値より高値が出たとしても,これらの因子による部分を除外しつつ入念に評価する必要がある.ここでは,婦人科疾患において汎用される腫瘍マーカーについて,その測定値に影響を与える因子について解説する.
種々の腫瘍マーカーが加齢,妊娠,炎症,および喫煙などの生活習慣因子によって影響を受けることはよく知られている.加齢により修飾を受けるとされているマーカーは,CEA,STN,CA125,CA72─4,SLXなどである.一般的にCEAとSTNは加齢によって血中の値が上昇し,CA125,CA72─4あるいはSTNなどは低下する傾向にある.これらの腫瘍マーカーの測定値の解釈にあたっては加齢の影響も考慮していく必要がある.また,喫煙によって高値を呈することがある腫瘍マーカーとしてCEAやSCCなどが挙げられる(表1).また妊娠期間で変動しうる腫瘍マーカーとして,AFP,CA125,CA72─4,およびhCGなどが挙げられる(表2)
次に婦人科疾患に代表的な腫瘍マーカーについて代表的な偽陽性疾患を表3に示す.以下に個々の腫瘍マーカー別に述べてみたい.
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