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はじめに
月経痛は,婦人科領域において最も多い訴えの1つである.子宮内膜症の増加や,本邦においては特に若年女性の性行為感染症の増加が問題視されており,月経痛にマスクされた器質的疾患の発見が重要である.Dysmenorrhea(月経困難症)は「苦痛の強い月経」を意味するギリシャ語である.月経の直前から月経期間中に生じ,多くの患者は「締めつけられるような下腹の痛み」と表現し,腰痛,頭痛,悪心,嘔吐などの随伴症状を同時に訴えることがある.月経困難症は,原発性月経困難症と続発性月経困難症に大別することができる.
原発性月経困難症とは,排卵性月経周期を有し,骨盤内病変を認めない機能性の月経痛である.米国の調査では,月経を有する女性の50%は月経困難症を経験しており,月経を有する女性の10%は耐え難い痛みのために,月のうち1~3日は学校や仕事を休まざるを得ないことがあると報告されている1).肥満女性,喫煙女性,出産経験のない女性で頻度が高く,また苦痛が激しいことが示されている2).原発性月経困難症は通常,初経後6~12か月ごろから認められ,10代後半から20代前半に頻度,症状のピークを迎え,以降,年とともに頻度も低く,症状も弱くなっていく.
続発性月経困難症は,骨盤内病変に起因する器質性の月経痛である.さまざまな原因が考えられ,その頻度が把握されていないのが現状である.原発性月経困難症とは逆に,年とともに増加し,通常20代後半から発症すると考えられる.続発性月経困難症の原因として最も多いと思われるのが,子宮内膜症であろう.子宮内膜症の人の9割は強い月経痛を訴え,月経時以外でも7割の人が痛みを感じている3).20代後半から発症頻度が急速に増え,40代前半ぐらいまで徐々に増える.また,マスメディアにも報道されたが,旭川医科大学が実施した大規模調査によれば,クラミジアの感染率は年齢別では16歳女子で最も高く23.5%にも達する.これは無症状のクラミジア感染率の調査の結果であるが,クラミジア感染が付属器炎から骨盤腹膜炎に進展し下腹痛を起こすことを考慮すれば,原発性月経困難症と鑑別すべき重要な疾患である4).
本稿では,原発性月経困難症と続発性月経困難症の鑑別を中心に,器質的な異常を見逃さないためのポイントを考察する.
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