今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[甲状腺疾患] 甲状腺機能亢進症
井槌 慎一郎
1
1聖マリアンナ医科大学産婦人科
pp.525-527
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100258
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1 診療の概要
甲状腺機能異常症合併妊娠の頻度は0.2~0.4%といわれ,その約60%が機能亢進症(多くはバセドウ病)である.生殖可能年齢である20~40歳代の女性に好発する疾患の1つであり,その合併妊娠の周産期管理を行う機会は決して少なくないため,その病態,妊娠時の変化およびその薬物療法に関する十分な知識を持ち,内科専門医とともに的確な管理に努め,それらの母児への影響を最小限にくい止めるようにすべきである.
甲状腺機能に異常がない婦人であっても,妊娠するとエストロゲンの増加によってサイロキシン結合グロブリン(TBG)が増加するため,血中T4,T3は1.5~2倍に上昇するが,遊離型T4(FT4)・遊離型T3(FT3)は妊娠による変動が少なく,いずれも初期に軽度低下するが非妊時の正常範囲内であることが知られている.また,TSHは,妊娠初期に増加するhCGがTSH受容体への結合能・刺激能を持っているため,その増加と反比例するように一過性の低下を示すがその後はあまり変化せず,非妊時の正常範囲内で推移する1, 2).したがって妊娠中の甲状腺機能の評価は,FT4,FT3,TSHによってなされるべきであるといわれている.
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