今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[甲状腺疾患] 甲状腺機能低下症
井槌 慎一郎
1
1聖マリアンナ医科大学産婦人科
pp.528-529
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100259
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1 診療の概要
妊娠に合併する甲状腺機能低下症の原因としては,慢性甲状腺炎(橋本病)が最も多く,次いで甲状腺機能亢進症に対する甲状腺亜全摘後の機能低下症が多い1).TSHの増加,FT4,FT3の低下がみられ,橋本病では多くの場合,抗サイログロブリン抗体や抗マイクロゾーム抗体などの甲状腺自己抗体が陽性を示す.
甲状腺機能低下症合併妊娠の頻度は0.1~0.15%で(臨床症状がなくTSH高値のみで,FT4,FT3が正常範囲の潜在性甲状腺機能低下を含めるともっと多いといわれている),機能亢進症合併妊娠よりは少ない1, 2).特に重症例では排卵障害から不妊症となりやすく,妊娠が成立しても流産に至ることが多いことが知られているが,一方で,妊娠前から甲状腺機能を的確にコントロールすれば,流産の頻度は高くならないとも報告されているため3),バセドウ病と同様に,妊娠前に十分なコントロールを行ったうえで計画的に妊娠することが望ましい.
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