今月の臨床 女性診療科外来プラクティス
VI 更年期・老年期外来
1. 更年期障害,婦人科心身症
後山 尚久
1
1大阪医科大学応用外科系講座産婦人科学
pp.550-557
発行日 2006年4月10日
Published Date 2006/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100098
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1 はじめに
女性診療においては,そのライフサイクルを考慮に入れなければならない.女性はそれぞれのライフステージで別々の顔を持って生活し,年代によってストレス要項がさまざまである.したがって,すべての年代で心身症と呼べる状況が観察される.心身症は「精神身体症」とも呼ばれ,この疾患概念は現実的なストレス環境への反応から生じる「現実心身症」と,通常のストレスと考えられるようなものでも,その受け止め方や対処の仕方に関して,個人それぞれの性格傾向や心理反応(すべてを悲観的に受け止める,自責の念が強い,完全主義,過剰適応など)の偏位に起因する「性格心身症」に大別される1).心身症は精神的ストレス,身体的ストレスと密接に関係した身体環境から生まれるが,非特異的な刺激によって起きる機能的な身体の“歪み”の原因がストレスと理解される.ストレッサーは物理的あるいは生理的因子としての職場,家庭,地域社会における問題がクローズアップされている.
女性のライフステージにおいて最も心身症の発症に適した時代が更年期である.更年期世代の女性はストレスに包囲された環境にあり,不定愁訴発症女性の約7割が解決できない問題を抱えている.その要因は配偶者の生活態度や配偶者との対人関係,子供の生活に関する問題や将来への心配,高齢両親の介護が多くの部分を占めている2).更年期の心身症として治療対象となるものが更年期障害,あるいは更年期不定愁訴症候群である.本稿では,女性更年期障害の診療について心身症としての臨床的対応を含めて解説したい.
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