今月の臨床 HRT—ベストテクニック
HRTの効果
1.更年期障害症状
後山 尚久
1
1大阪医科大学産婦人科
pp.1344-1349
発行日 1998年11月10日
Published Date 1998/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903443
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
更年期障害の概念とその頻度
女性は40歳を過ぎると,加齢による退行性変化,性ホルモン分泌低下,生理的諸機能の減少などがみられるようになる1,2).それに加えて50歳前後には,家庭や社会での種々の環境の変化が外因ストレッサーとなり,自律神経のバランスが失われ,多くは不定愁訴という形で身体症状を発症する.これが不定愁訴症候群である.一般的に45〜55歳のほぼ10年間は更年期と言われており,この時期の精神身体不調を「広義の更年期障害」として扱う場合が多い.筆者らが行った閉経女性へのアンケート調査によれば,更年期に身体の不調を経験したのは48.8%であり,23.2%が治療経験および1年以上の更年期障害を有していた(図1).いわゆる広義の更年期障害の発症頻度は日本人の場合にはおよそ50%であるといえる.
しかしながら,すべての女性に更年期や閉経が存在するにもかかわらず,その半数は身体不調を自覚しないことが判明した.このことから,広義の更年期障害の要因は性機能の低下のみならず,ほか(性格や環境因子のかかわり)に見いだされる場合が少なくないことは容易に想像される.内分泌変動も個人差が大きく一律ではなく,閉経前でもエストラジオール分泌がきわめて減少している例や,閉経してもゴナドトロピン濃度は上昇しているにもかかわらず,数年にわたりエストラジオール濃度が保持されている例も見受けられる3-5).
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.