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1 不妊症における子宮因子と卵管因子とは
生殖において,子宮および卵管が重要な役割を担っていることは万人の認めるところである.発生学的にも同一のミュラー氏管由来であり1),その役割も連続的であるが,その機能を表1に要約した.まず生殖の初期の段階で,精子は腟から卵管へ移動することが必要である.その際,子宮は単なる通り道としてではなく,腟円蓋部を頸管粘液で覆い,精子を子宮頸管内へ誘導し,精子の「旅」をサポートしている.精子は,子宮内膜の子宮内液を通過後,卵管の線毛を遡上して,卵管内膜から卵管内液の種々の物質を介してサポートされ,受精能を獲得する.排卵された成熟卵は,卵管采が捕捉し,卵管膨大部で受精する.受精卵は,卵管を子宮に向かって輸送されながら卵割を繰り返す.さらに子宮は,卵管から到来した接合子(zygote)をその腔内に数日間保持したのち,最適条件に整えられた子宮内膜へ接合子を受け入れ,着床を完成させる.着床の後は,外界から胎芽/胎児(embryo/fetus)を保護し,分娩までの期間はその生育の場として機能する.以上の機能に起因する不妊症であれば,子宮性または卵管性不妊ということになる.したがって,これらの機能を総合的に評価するために,表2に列記した検査が施行される.不妊症の系統的ルーチン検査については別項で解説されているが,そのなかで表2に列記されたものが本稿の主題に関連する検査である.
また本稿は,表2の検査から明らかとなった子宮および卵管の器質的疾患の不妊症としての病因・病態,診断,治療について解説がすることが趣旨である.すなわち,例えば黄体機能不全で代表される子宮(内膜)の機能異常については,子宮性不妊というよりもむしろ内分泌異常として取り扱われることが一般的である.したがって本稿では,子宮および卵管の器質的疾患について焦点を絞り解説する.
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