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1 外来における子宮筋腫の臨床診断を慎重に
一般に,子宮筋腫は内診と超音波検査によって容易に診断できるものと考えられており,また臨床的取り扱いも症状の有無を考慮し,手術療法,GnRHアナログによる保存的治療,子宮動脈塞栓術(UAE)や集束超音波療法(FUS)などのインターベンショナルな治療,または経過観察が選択されている.ところが,実際は「子宮筋腫」と考えた腫瘤のなかには組織学的に異なる種々の疾患が含まれており,悪性腫瘍である可能性もある.近年,「子宮筋腫」と診断しGnRHアナログ療法やUAEを行ったあとに平滑筋肉腫と判明し,予後不良であった症例が散見される.したがって,子宮筋腫という臨床診断はあくまでも慎重に行うことが重要である(図1).
「子宮筋腫」と考えた腫瘤が通常の平滑筋腫(usual leiomyoma)でない頻度は,平滑筋肉腫(leiomyosarcoma : LMS)が0.13~0.7%で,組織学的に筋腫とも肉腫とも断定できない中間群,すなわちsmooth muscle tumor of uncertain malignant potential(UMP)も含めると約1.0%と考えられる.さらに,内膜間質肉腫(endometrial stromal sarcoma : ESS)も0.15%の頻度で含まれており,鑑別診断にはESSも重要である.実際,MRI導入前の時代の臨床診断を後方視的に検討すると,「子宮筋腫」と考えて手術を行った腫瘤の約5%が組織診断の異なる腫瘍であり1),小児頭大以上の巨大腫瘍など「筋腫でない可能性もある」と考えた場合は18.6%が悪性腫瘍であった1).近年では,これら通常の筋腫と異なる腫瘍群は,MRIを用いて予測することがある程度可能となってきた.
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