今月の臨床 子宮内膜症の新しい治療戦略
がん化への対応
腹膜病変のがん化
中原 健次
1
,
早坂 直
1
,
倉智 博久
1
1山形大学医学部発達生体防御学講座女性医学分野(産科婦人科学)
pp.140-143
発行日 2006年2月10日
Published Date 2006/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100024
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はじめに
近年,子宮内膜症(以下,内膜症)の腫瘍的性格が認識されるようになってきている.卵巣内膜症性嚢胞(以下,チョコレート嚢胞)からの癌発生率が0.7%程度ということは,年代・地域を問わず共通認識となっている1, 2).近年では,経腟超音波検査の発達とともに,正常卵巣,卵巣嚢胞,卵巣嚢腫,そして卵巣の腫瘍性変化がより詳細に把握できるようになったが,それでも同様の数値であることは興味深い.
チョコレート嚢胞の悪性化とは別に,腹膜上の内膜症病変の悪性化を含め,腹膜腫瘍が指摘され報告されてきた(表1).腹膜腫瘍は,しばしば卵巣癌(ときには非定型的所見としながらも)の術前診断を受けながら,開腹時に卵巣そのものは正常所見であったり,あるいは卵巣が原発とは思われないような外部からの浸潤の形式を取り,結果的に腹膜の病変が主体であることもある.今回のテーマは内膜症から生じた腹膜癌であるので,その点に絞ってまとめてみたい.チョコレート嚢胞を中心にした論文は多いが,腹膜内膜症から発生した癌をまとめた論文は少なく,またデータの解釈も注意を要する.
理解が得られやすいように,項目を設定して,それに沿ってまとめてみたい.その際,できるだけ腹膜癌についてのデータのみを抽出して記述するが,それが困難な場合は,チョコレート嚢胞を中心とした記述かどうかなど明確にしていきたい.
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