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I.末梢神経系の構成
末梢神経系は,神経根,神経節および神経からなる.神経根は前根および後根より構成され,前根は脊髄前柱および側柱に存在する神経細胞体から末梢に走る運動性ならびに自律神経性の遠心性神経線維が含まれ,後根は後根神経節に発する知覚性神経線維が含まれている.神経線維は有髄線維と無髄線維が束をなし,神経線維の体積は神経細胞体の200倍以上である.無髄神経線維は大きくても直径1μであるが,有髄神経線維ではその20倍にも及ぶ.神経線維は中枢から末梢に及ぶと次第に細くなり,その大きさの範囲は1倍から100倍まで及ぶ.有髄神経線維ではRanvier紋輪間に1個のSchwann細胞と1個の神経線維からなり,無髄神経線維では何個かの神経線維を1個のSchwann細胞が共有している.髄鞘は神経線維を螺旋状にとり囲むSchwann細胞の細胞膜に連続した結合膜(mesaxon)からなり,Schwann細胞の外側には基底膜がある(図1).Ranvier紋輪では髄鞘が完全に中断し軸索は被鞘がなく,この紋輪の存在により多数の分節に分かれる.その紋輪間距離は大径線維では長く,小径線維では比較的短い,神経線維が分岐するのはRanvier絞輪の部位であり,神経根部は中枢神経系と末梢神経系の特殊なRanvier絞輪部といえる.Schmidt-Lanterman切痕は髄鞘板層膜が周期線に沿い離開している部位であり,Schwann細胞の細胞質がある部位である.この切痕は髄鞘などへの栄養通液路と考えられる.神経および神経根の被膜は,神経内膜,神経周膜および神経上膜からなる(図2).神経内膜は軸索のすぐ外側にあり,Schwann細胞の基底膜とは区別される.神経周膜は多くの神経線維および神経内膜を神経束として含む強固な結合組織であり,神経束の機械的性質の保持に重要な構造でまた神経線維の環境を一定にしておくBlood-nerve barrierとしての機能をもっている.神経根の基部では硬膜に連続する,いくつかの神経束を大きく包み1本の末梢神経となしているのが神経上膜であり,疎な構成をもち,動・静脈を伴っている.運動線維は骨格筋線維に,知覚線維はその知覚受容器にそして自律神経線維は平滑筋・心筋・腺などに軸索終末をつくって終わる.末梢神経は神経間で叢状形成をなしており,15mm離れればその構造は違う(図3).阻血に対しては骨格筋以上に障害をうけやすく,神経の牽引率15%以上,圧迫は30mmHg以上を受ければ著しい血流障害をきたす.
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