視座
医学における研究の価値と条件
石井 清一
1
1札幌医科大学整形外科
pp.1347-1348
発行日 1987年12月25日
Published Date 1987/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408907734
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整形外科の分野でも,最近の学会や研究会の多さには驚くばかりである.そこで発表される論文の数に反して,日本の研究にオリジナリティーがないことは,われわれは漠然と実感している."生物科学の奔流〜創造的研究の提言〜"(井川洋二編,共立出版株式会社)という本の中で,西村暹氏が日本の研究のオリジナリティーについて書いておられる.最近の論文引用頻度の高い研究者を上位から1000人とり,それを国別に分類したガーフィルドのデータによると,米国が736名と圧倒的に多い.次いで英国(85名),スエーデン(42名),フランス(26名),カナダ(23名),西ドイツ(21名),スイス(13名),オーストラリア(12名),そして日本(11名)の順である.
西村氏によると,日本人の研究には新しい酵素や生体成分,抗生物質などを分離し,その作用を明らかにしたものに勝れたものが多いという.一方,新しいセオリーを打ち立てて,その仮説を緻密な構成力をもとに実証して行くような研究になると,日本人は欧米人に立ち打ちができない.これには,漠然とした情緒的な日本語でものごとを考えているうちに,自然に形成された日本人の国民性がおおいに関係している.
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