視座
医学の進歩と整形外科の立場
荒井 三千雄
1
1秋田大学整形外科
pp.1019
発行日 1981年11月25日
Published Date 1981/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906436
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われわれの卒業した昭和26年頃は,まだポリオの流行が続いていて,当時,少壮の飯野教授はその手術に情熱を注いでおられた.各種の腱移行術や,絹糸,ナイロン,テトロンなどを用いた人工腱,人工靱帯など多様な手術が盛んに行われ,中には理解しがたい手術もあつたが,いずれモノグラフを執筆されることと思い,その実現が待たれていた.それから2,3年して,ソークワクチンの投与が始まるや,ポリオの発生は劇的に終息し,医学の素晴しい進歩に驚嘆したことは忘れられない.当然,ポリオ後遺症の手術も漸減し,この問題は自然に解決されるに至つている.
この偉業が,整形外科とは全く無関係に成し遂げられたことは,標題に掲げたような整形外科の立場についていささか疑念を産み,今も頭から消えないでいる.最近ではリファンピシン出現後の骨関節結核の治りの良さにも同様な傾向が窺えるし,また関節リウマチでも,病因の解明や薬物療法の進歩によつて,観血的治療の多くが不要になる可能性もある.骨肉腫に対する整形外科医の悪戦苦闘にもかかわらず,5年生存率の向上はごくわずかにすぎないが,将来,悪性腫瘍の画期的な治療法が出現して,飛躍的な進歩をもたらすこともありえよう.しかも,残念ながら,整形外科がこれらの進歩に主導的役割を演ずる可能性はきわめて少ないと思われる.
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