論述
随意性肩関節脱臼の病態について
水野 耕作
1
,
武部 恭一
1
Kosaku MIZUNO
1
,
Kyoichi TAKEBE
1
1神戸大学医学部整形外科学教室
pp.542-551
発行日 1978年6月25日
Published Date 1978/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905723
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はじめに
習慣性肩関節脱臼は肩関節疾患のうちでもかなりの頻度にみられる疾患である.その病態ならびに成因については多くの報告がある,しかし,"肩が脱けやすい"という患者の訴えだけで簡単に習慣性肩関節脱臼と診断され誤った治療をされる場合もある.その一つが随意性肩関節脱臼である.
1722年Portalは習慣性肩関節脱臼のうち,患者自身の意志によつて肩を脱臼させ整復できる症例に気づき,これをvoluntary recurrent dislocation of the shoulder(随意性習慣性肩関節脱臼)として発表し,明らかな外傷の機序をもつ通常のtraumatic recurrent dislocation of the shoulder(外傷性習慣性肩関節脱臼)と区別した.随意性肩関節脱臼は「患者自身によつて脱臼および整復できる肩関節脱臼である」という特徴以外の記載はなく現在でも病態には不明な点が多い.従つて,それに有効な治療法がないとされている.
そこで教室における典型的な随意性肩関節脱臼の症例をもとにその病態を明らかにし,いわゆる動揺肩loosening shoulder,習慣性肩関節脱臼ならびに亜脱臼との鑑別,関節靱帯の弛緩を主徴とするEhlers-Danlos症候群との関連について述べる.
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