臨床経験
習慣性肩関節亜脱臼の病態と診断
水野 耕作
1
,
広畑 和志
1
Kosaku MIZUNO
1
,
Kazushi HIROHATA
1
1神戸大学医学部整形外科学教室
pp.678-684
発行日 1978年7月25日
Published Date 1978/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905742
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はじめに
習慣性肩関節脱臼traumatic recurrent dislocation of the glenohumeral jointの病態や治療についての報告は数多くある.しかし,習慣性肩関節亜脱臼traumatic recurrent subluxation of the glenohumeral jointについては,言葉自体も聞き慣れず,CowanやDePalmaなどのほか散見するにすぎない.肩関節亜脱臼という言葉を使つた文献はかなりあるが,殆んどのものが,いわゆる動揺肩に関する報告であり,靱帯や関節包の弛緩を伴つた症例についてのものである.しかし,人の外傷性関節脱臼の中で外傷性肩関節脱臼の頻度が最も高いことからみて,肩関節に脱臼機序が働いても完全脱臼までに至らず,亜脱臼にとどまるという現象が起こつてもよいはずである.しかも,これらは,靱帯や関節包の弛緩をもつ動揺肩における亜脱臼とは,自らその愁訴,症状および病態に違いがあり,また,完全脱臼と比べても,異なつているはずである.
そこで筆者らは外傷に基因する習慣性肩関節亜脱臼の4症例を経験したので,これらの所見をもとに,retrospectiveにその病態を追求し,診断法などについて報告する.
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