論述
骨肉腫に対する化学療法—とくに術前局所動脈内投与法と手術の併用について
赤星 義彦
1
,
武内 章二
1
Yoshihiko AKAHOSHI
1
,
Shoji TAKEUCHI
1
1岐阜大学医学部整形外科学教室
pp.790-797
発行日 1976年9月25日
Published Date 1976/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905398
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はじめに
四肢に原発した骨肉腫は,罹患肢の切断術によつて局所腫瘍の完全除去が可能であるにかかわらず,85%以上の症例が術後1ないし2年以内に肺転移を来たして死の転帰を辿る.これに対して術前放射線治療併用は古くから行われており,Coley's toxin,BCGなどによる術後の免疫療法や全身的化学療法も試みられているが,早期診断に若干の進歩がみられる現在においてもなお従来の方法,切断術のみでは5年生存率10〜15%の限界を越え得ない.すなわち骨肉腫の予後を決定するものは肺転移であつて,現時点における肺診断学で発見し難い肺の腫瘍細胞栓塞や微細転移巣を如何にして鎮圧するかが,第一の治療目標であり,治療成績向上のためには化学療法と局所根治手術併用しかあり得ないことは明瞭である.
われわれは1963年以来,術前に制癌剤の局所栄養動脈内挿管投与intra-arterial infusion(以下i. a. infusionと略す)を行なつた上で切断等の根治手術を施行し,さらに術後の化学療法を行う一連の治療方式について基礎的,臨床的研究を進めて来た.本稿では,とくに術前化学療法の意義,実施法とその治療成績など,われわれの研究経過について述べ,諸賢のご批判を仰ぎたい.
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