論述
悪性骨腫瘍の治療—特に肺転移巣の処置とその考察
柴田 大法
1
Taiho SHIBATA
1
1関西医科大学整形外科学教室
pp.798-808
発行日 1976年9月25日
Published Date 1976/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905399
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はじめに
悪性骨腫瘍,特に骨肉腫の治療成績を向上させるため種々の試みがなされてきたが,近年その予後の改善の上に化学療法が貢献していることが認められ5,20,21,24),そして一方では確実に長期生存例が増加してきている.一般に長期生存例には骨肉腫としては何らかの非定型的な面があることが指摘されており1,7),それらがかかる特殊例の積重ねに過ぎないともいえる一面があるのは否めない.長期生存例を検討してみるとそれが2大別されるのに気付く.一つは原発巣の根治手術後,転移を全く生じることなく健在なものであり,他は一旦転移を生じながらその切除に成功して健在であるものである.前者は骨肉腫一般からいえば非定型例であるのに対し,後者はむしろ定型的骨肉腫例の側面を有している.著者らは原発巣根治術後出現した肺転移に対して,肺手術をかなり積極的に行つてきたが,かかる骨肉腫転移巣に対する肺手術が果して根治手術たり得るのかという疑問をかねて抱いてきた.今回,われわれの症例をその意味で検討すると共に,文献的にみた肺手術の根治性を探求してみたので論述してみたい.
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