臨床経験
中学野球部員における肘関節障害について
高槻 先歩
1
Senpo TAKATSUKI
1
1小山市立小山病院整形外科
pp.649-658
発行日 1976年7月25日
Published Date 1976/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905376
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緒言
野球の場合のボールを強く投げるという動作は比較的異常な運動であり,肩・肘あるいは手関節に種々な程度のストレスを与え,これらの関節に時に障害因子として働くことは想像に難くない.一般に用いられている「野球肘」という用語は,野球により肘関節に訴えられる主として疼痛性障害に対する総称であり21),その中には肘関節の各種の病変が含まれている.
文献を通覧すると,野球肘の調査研究は主に高等学校,大学,社会人あるいは職業野球選手に関するものである.小中学生に関しては,1953年大江ら22)が肘関節離断性骨軟骨炎の3例を報告し,少年野球ではボールの重量を軽くする必要があると主張し,1957年宮城ら17)が幼少年の投球動作には一考を要すると述べたが,1960年Brogdonら7)がlittle leaguer's elbowと名づけた3例を報告するまではあまり注目されなかつた.また,少年野球選手における各種の肘関節障害の発生頻度に関する調査研究としては,1962年前田ら15)の八幡市内中学校の調査,1965年のAdams11)の調査がある.しかしながら,これら貴重な症例報告や調査研究の成果はわが国においては,義務教育下の小中学校の野球指導には十分反映されていないようである.
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