論述
変形性関節症の病理
藤本 憲司
1
,
田口 靖夫
1
Kenji FUJIMOTO
1
,
Yasuo TAGUCHI
1
1信州大学医学部整形外科学教室
pp.36-48
発行日 1976年1月25日
Published Date 1976/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905299
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まえがき
骨関節炎すなわち変形性関節症の範疇は非常に広く,また変形性関節症に認められるような病理学的変化が,外傷性,炎症性,代謝性病変の終末像として,あるいはそれらに続発性に発生するほか,なんらの誘因もなく老年性の変化として発生することは周知の事実である.そこで前者は二次性,後者は一次性の関節症とよばれているが,二次性の関節症はそれぞれの原疾患に続発して起こつた結果的病態である.
変形性関節症は病理学的には関節構成体である関節軟骨に,まず退行性変化が起こり,ついで骨および関節軟骨に増殖性変化が続発し,それらの変化が慢性に進行して関節の形態が変化するものであるということは定説となつている.しかし,このような病理形態学的変化は,炎症症状である疼痛,腫脹という本症の臨床症状と必ずしも平行しない面があり,本症の病態への炎症の関与,とくに本症の発症あるいは病変促進機序と炎症との関係については,今日まだ多くの議論がある.また,変形性関節症が老年性の一般的な変化,すなわち正常老化現象なのか,あるいは老人に起こる老年性の疾患なのか,明確に論じた学説はない.したがつて変形性関節症の病態を炎症という観点から究明する際には,一次性関節症の関節構成体である関節軟骨をはじめとして,関節滑膜および関節液の病理組織学的変化や生化学的あるいは物理学的(機械的)変化を解明することが重要である16,58).
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