臨床経験
陳旧性の環軸関節回旋完全脱臼の1例
小林 慶二
1
,
横井 正博
1
,
内西 兼一郎
2
Keiji KOBAYASHI
1
1慶応義塾大学伊勢慶応病院整形外科
2慶応義塾大学医学部整形外科学教室
pp.719-723
発行日 1975年8月25日
Published Date 1975/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905228
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環椎・軸椎によつてなす環軸関節は頭部の回旋運動を行うことを主たる機能とし,この運動域は全頸椎の30%から50%におよぶ.すなわちこの関節嚢は弛緩し,関節面は水平に近く形成されているが故に大なる回旋運動が可能となつている.また同時によく発達した筋層群と強靱な靱帯(翼状靱帯)が過度の回旋運動を制限している.そして外傷に対してこれらの強力なcheck mechanismが作動するため,この関節が単純な回旋脱臼を起こすことは極めて稀となつている.事実,文献上にも明らかなlocking rotary dislocationはGreeley15),Braakman & Penning1)の2例がみられるにすぎず,本邦ではいまだ報告されていない.
最近,われわれが経験した環軸関節回旋完全脱臼は長期間脱臼位にあつたにもかかわらず,持続牽引によつて整復することができた興味ある症例と考え,その診断と治療を中心として考察を加えて報告する.
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