カラーシリーズ 整形外科手術・3
上位胸椎に対する前方侵襲法
池田 亀夫
1
1慶応義塾大学整形外科
pp.794-797
発行日 1974年10月25日
Published Date 1974/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905052
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前回において胸鎖乳突筋前縁に沿う切開で頸椎から第2胸椎まで展開できることを述べたが,今回は胸椎柱中央より高位の胸椎侵襲法について述べる.
半側臥位ないし側臥位にて対側に枕をおき手術側を伸張する,脊椎棘突起列と肩甲骨椎骨縁のほぼ中央で第2肋骨高位からメスをいれ,下行し,肩甲骨下角直下を巡り,前腋窩線に至る.必要に応じて皮切の上・下端は短縮あるいは延長する(後側方切開または後方切開)(第1図).僧帽筋,菱形筋,闊背筋を切離し,肩甲骨とともに前上方へ排する,このとき注意して頸横動脈の本幹を損傷せずに各分枝を確実に結紮する.切離せる筋断端を肩甲骨とともに前上方へ,固有背筋群を後内方へ排すると肋骨面が露出する.肋骨を移植骨として利用するので肋骨切除,開胸する.普通第3肋骨を,第4胸椎以下に対しては1〜2椎高位の肋骨を骨膜下に切除する(第2図).肋骨裏面の骨膜を切離すると半透明の胸膜を透して直下に肺の運動を認める.胸膜内または胸膜外(胸内筋膜下)で剥離を進めて椎体に達する.呼吸能に及ぼす影響,術後管理の容易さなどの点から後者を愛用する.とくに胸膜癒着の存するときは胸膜外剥離は容易である(第3図).右側浸襲は心臓に与える影響が小で,視野が広く,一方左側侵襲は胸大動脈が手術遂行上好個の示標となり,肋間血管を捕捉し易いなどの利点をそれぞれ有するが,要は開胸による呼吸障害や残存呼吸能の良否を考慮して侵襲側を決定する.
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