論述
骨折と脂肪塞栓
猪狩 忠
1
Tadashi IGARI
1
1岩手医科大学整形外科学教室
pp.450-464
発行日 1973年6月25日
Published Date 1973/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904848
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体内にある脂質が何かの原因によつて,脂肪滴(fat globule)となり,栓子化し,血管を閉塞せしめる脂肪塞栓(fat embolism)の症候群の存在については,すでに1669年Lower1)の論文で指摘され,以来いろいろの疾患で発生することが知られてきている.すなわち本症は火傷,骨髄炎,糖尿病などの疾患でも発生することが報告されている.
しかし,外傷に伴つて脂肪塞栓が発生することについてはZenKer(1862)2)の剖検例についての報告が最初のようである.また臨床的に,骨折や軟部組織の損傷に伴つて脂肪塞栓の発生することが多いということが判つてきたのは,第一次大戦においてであり,しかも戦傷者においては,脂肪塞栓がしばしば重要な死因をなしていることが認められた(Watson Jones)3).
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