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緒言
変形性股関節症の病変の程度を把握し,また手術による症状改善の程度を知るために,成績判定基準の設定が必要とされ,しかもでき上がつた判定基準が全国統一のものとして使用されるべく,日本整形外科学会では委員会を設けて基準作成にあたらせた.その成果は第44回日本整形外科学会総会において第三次案として報告された18)21).疼痛,可動域,歩行能力およびADLがそれぞれ程度に応じて段階づけられ,その総和でもつて臨床成績を表現し,またレ線成績はレ線変化に応じて段階づけられている.しかし臨床成績とレ線成績との相関性は高いとはいえ,必ずしも対応しないことは日常よく経験するところである.変形性股関節症の病状を臨床成績とレ線成績のみで判定するのではなく,炎症の際の白血球数,血沈,CRP等の検査のように,何らかの補助検査によつて数量的に表現できれば,病状をより一層把握することができるのではなかろうか.
種々の関節疾患の診断と予後判定に関節腔の排導動態の解析が少なからず役立つことは,新野ら19),松永ら13)のウログラフィンによる研究あるいはSharp17),中村ら15)16)のPSPによる研究で報告されている.また排導動態の追求に放射性同位元素(RI)を使うこころみはHollanderら8),Harris7),Davisonら3),松永ら13),古本ら5)の多くの研究者によつてなされている.しかし従来行なわれてきた研究はいずれもapproachの簡単な膝関節を対象としたものである.今回われわれは99mTcO4-を股関節腔に注入し,体外測定法により変形性股関節症における関節腔の排導動態をしらべ,木疾患の病状との相関性を追求した.
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