シンポジウム 脳性麻痺
治療の問題点—上肢について
伊藤 鉄夫
1
Tetsuo ITÔ
1
1京都大学医学部整形外科学教室
pp.810-818
発行日 1967年8月25日
Published Date 1967/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904273
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脳性麻痺による上肢の障害はQuadriplegia,Diplegia,Hemiplegia例にみられるのであるが,Quadriplegiaでは全身の麻痺が高度で,医療の対象にはならない.したがつて手の麻痺の治療の意義も少ない.Diplegiaでは.手の症状が比較的軽いものが多く,主として装具療法と機能訓練が行なわれる.Hemiplegia spasticaでは一側上肢が強くおかされるものであつて,治療の意義も大きく,機能訓練,装具療法,手術療法の対象として注目されている.小児のHemiplegia spasticaは,多くの場合,脳の炎症によつて後天性に発生するものであるが,脳の炎症例が減少した今口では,小児のHemiplegia spasticaは次第に減少してゆき,他方,脳卒中による老人の症例が増加する傾向がみられる。上肢痙性麻痺に対しては,今日までに,多くの人によつて種々の治療法が根気強く行なわれてきたのであるが,その努力に比して得られた効果ははなはだ少ない。本症の治療に当つては,その病理をよく理解し,治療の成績には,症例に応じて,それぞれ一定の限度があることを十分に知つておく必要がある.
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