シンポジウム 脊髄損傷患者に対する早期脊椎固定術の適応と成績
東北労災病院における手術例の検討
木村 元吉
1
Motokichi KIMURA
1
1東北労災病院整形外科
pp.382-393
発行日 1968年5月25日
Published Date 1968/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903914
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まえがき
私は当院開設以来14年間に脊髄損傷に対する手術的療法に関する報告を数次にわたり行ない,早期の損傷脊椎・脊髄手術の必要性を強調してきた.特に昭和37年,第10回災害医学会のシンポジウム「脊髄損傷」のうち「損傷部に対する観血的手術」と題して,全国労災病院および箱根療養所の協力のもとに集めえた2300症例中,損傷部脊椎・脊髄手術を施行せる642症例の統計的観察を行ない,リハビリテーションの観点,ときには麻痺回復の観点からしても,早期に適切な手術を敢行したものによい成績を得ている事実,それにもかかわらず,かかる手術が僅少であり,また逆に無益有害の手術を行なわれた症例の多い事実を指摘した.そして脊髄損傷に対しては,より積極的に有効適切な方法を用いるべきだとの意見を述べた.しかし,一般に全国病院から集計した統計では大体の傾向を窺い知ることができても,おのおの条件を異にする症例による深い分析や検討の結果を得ることは困難で,そうした点では,1人の専門家がある系列に沿つた考えの下に実施してきた結果が,より正確に問題点を把握するよすがになりうることもある.本論文はこのような考えで,当院のみの症例を研究対象として選んで書いてみた.
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