視座
医学・医療の行方
嶋村 正
1
1岩手医科大学整形外科学教室
pp.1183
発行日 1999年10月25日
Published Date 1999/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902814
- 有料閲覧
- 文献概要
近年の医学の進歩は加速度的発展の様相を呈し,その中で医療も多大な恩恵に浴してきました.人の遺伝子解析も順調に進んでおり,近い将来その全貌が明らかにされようとしています.また,動物の胚幹細胞からの分化誘導による各種組織の培養が可能となり,生体の各種組織の再生・修復への光明がみえてまいりました.行きつく所に限りなく近づいていることが,昨今ひしひしと感じられます.まさに“行くとして可ならざるは無し”の体を呈しています.これらの成果は遠からず医療に反映・導入されるものと思われます.このことは,一方では大いなる希望・夢を抱かせてくれますが,他方では同時に人の生死制御といった不安・危惧も内包しております.
教・行・証の三要素は,医学・医療においてもその根幹をなしております.期待される証の成否は偏に教に基づくハイテク技術・機器を駆使した高度先進医療に代表される行の正否にかかっております.このことは,ハイテク兵器による誤爆事件を例に取るまでもなく,自明の理です.事を判断し,決行するのは常に人(医師)ですので,これにかかる責任は医学・医療の進歩にも増して,経年的に大きくなってきております.このため,informed consent,second opinion,evidence-based medicineなどの種々の事項が取り上げられ,不可欠の要素として浸透してきております.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.